フェイク品は何故受付して貰えない。

特に自動巻のフェイク品について。

以前にもこのコーナーで”雑貨ウォッチが嫌われる理由”を書きました。

 

大旨の理由は触った場合”壊れやすい”でしたが、フェイク品はこれに”法に触れたくない”ですか。日本人特有の「臭い物には蓋をする」という発想もありますね。そのうちのCooの腕時計が蓋されるかも(;^_^A。冗談はさておき、このフェイク品(パチ・偽物・レプリカ)色んな呼び方がありますが特にフェイクの自動巻です。

何処の店でも説明無しで”当店では取り扱いません”となります。でも説明はしても一言二言では説明がつかないので一言で”扱いません”となるのですが、そこはCooの腕時計何故そうなるのか解説にチャレンジです。

10年くらい前はMIYOTAの既製品の自動巻ムーブメントなんかがあったりで、ロレックスやミューラーのフェイクに収まってました。このくらいのムーブメントならまだ何とか修理は出来たのですが、最近のムーブメントは違います。MIYOTAよりも見栄えは良いのですが修理が出来ません。

最近は中国物が多く出回っているようで、良くこれだけの物が作れるなといった感じです。

ちゃんとローターも入っていて巻き上げますから機構はちゃんとした自動巻時計です。ところが材質が脆い。機械時計のムーブメントというのは金属同士の摩擦で動きますから、ある程度摩耗に耐える為にはパーツに硬度が必要になります。

ところが最近の物は金属が柔らかいのが特徴ですか。分かりやすくする為に極端な比喩で解説しますと、例えば国産の自動巻の機械があります。これと全く同じサイズ形状で柔らかい金属でパーツを作ったとしましょう。同じ形状ですから組み立てて油さえさせば動きます。

ところが歯車やその軸、また地板までが柔らかい訳です。正常にショックを与えないで使用すれば精度もそこそこには調整出来ます。

ところが何かショックがあった場合。例えば歯車の軸が歪みます。歪むと金属同士の摩擦が増えて急に精度が落ちます。また、これを修理する場合ですが修理ともなれば機械を分解していく訳ですが、先ずは裏蓋を開けます。竜頭を抜く為にオシドリってパーツを押さえる訳ですが金属が柔らかいので押した瞬間に変形する事があります。

でも竜頭は抜けますから、ムーブメントを取り出します。ネジを外して分解していく訳ですが、その前に文字盤の針を外します。この時に針も柔らかいですから感単に取れますが取りつける時には食い付きが甘くなっています。

同じように分解していくとネジだけではなく、ある程度力を掛けて外す部品もありますから全てが歪んで行きます。するとどうなるのか、今度組み立てる時に元の形状から歪んでいますから、本来ならパカパカと、はめ込んで組み立て出来るものが微妙にずれている訳です。その変形を修正しながら組み立てないといけないので組み立てに普通の数倍手間が掛かります。

また自動巻ムーブメントには写真の”赤い所”。これ歯車の軸の先端が摩耗しにくい様にルビーで受けている訳ですが、まずこういった石は入っていません。入っているように見えるものもありますが。

また組み立ての歳、ネジを締めて行きますがちょっと力が入り過ぎるとネジをなめてしまいます。その瞬間ネジが効きませんから部品が固定出来なくなります。つまり触れば触るほど深みにはまる素材(ムーブメント)なのです。

先日もサイトでロレックスのフェイクの竜頭が外れたので交換の依頼がありました。竜頭のみと思いましたがネジが緩んで外れたのでは無く、巻芯の途中で折れていました。そこで折れてムーブメントに残った巻芯を取り出す必要があるのですが、引き抜くために摘む箇所がありませんから針を外して文字盤も外して行きます。

ところが今、書いた様に外すたびにどんどん部品が変形して行くのです。結局その腕時計は元の状態にさえ戻せずに返却になりました。いくらフェイクとはゆえ、こうも脆い素材のムーブメントが出回っているとは・・・

まだ購入価格20.000円くらいで買える無名の自動巻の方がマシです。ロレックスやミューラーなど有名ブランドのフェイクは外見にはコストが掛かってますがムーブメントは中国での低コスト大量生産のムーブメントが入っている事が多くなりました。でも感じる所は。

ハッキリ言って腕時計では無いです。腕時計のムーブメントの形をした金属の模型くらいの感覚ですね。雑貨ウォッチを腕時計の職人さんは”腕時計の形をしたオモチャ”と言いますが、最近の自動巻も同じ事が言えるでしょう。

先日も文字盤の書き換え依頼がありました。文字盤に湿気が入ってシミが出来ので書き換えでした。ところが書き換える為には文字盤を外しますが、その瞬間にエト足(文字盤の足)が簡単に外れます(折れます)。当然そのまま修理不可で返却になりますが中には”元の状態に戻して返却して欲しい”って方も居ます。こう言う人が居る限りは(居て当然ですが)「最初から受け付けない方が賢明」となる訳です。

”触らぬ神に祟りなし”ってところですか。最近では”触らぬ神に丹波哲郎”とも言われますが。(;^_^A

こういった所から最近のフェイク品はとても怖くて触れません。極端ですが修理を預かろうと思えば「最悪は修理不可でバラバラの状態で返却になっても良いですか?」くらいの感覚です。

よって自動巻のフェイク品は以下の修理項目は不可です。

※ 針や文字盤に触れる修理
※ 時間の遅れ進みなど精度に関する修理、また調整も。
※ ガラス交換

感単に言ってしまえば裏蓋を開けないで出来ることのみ。つまりは受付出来ないに等しい訳です。

これも以前にあった話ですが、ガラス交換の依頼でした。普通の丸いガラスなら既製品で合いますって事でムーブメントを取り出してガラス交換。ところが出来上がって返送後です。”送った時よりも誤差が大きくなっていますが何とかなりませんか?”です。最悪はガラス交換の為とはゆえ、ムーブメントを取り出すと動かなくなります。

ならば修理などしないで”ムーブメントごと交換”すれば?といった発想もあると思います。残念ながら一般の時計屋にそういう裏ルートは無いのですが。もしあったとしてもムーブ交換にはムーブを3つ必要とするかもしれないです。おそらくフェイクの腕時計を作っている所でもムーブメントをケースに入れた瞬間出荷が出来ない誤差になったりで廃棄されている製品も多いかと?。そのロス率を知りたいものです。

よってフェイクでも”ある程度の保証期間”はあると思いますが、不具合が出れば腕時計ごと交換するしか無いでしょう。もしその時にムーブメントのみ修理で戻ってくれば、それは粗悪では無いソコソコのフェイクであったと判断出来るかもしれないですね。

こういう物が出回ると、おそらく時計屋は全てのフェイクは触らない時が必ずきます。この私でさえ触るのが怖いです。雑貨ウォッチの説明の所で”昔の雑貨ウォッチは実際、故障が多かった”と書きました。今は雑貨ウォッチのクォーツムーブもレベルが上がって来ましたが。

自動巻に関しては昔の雑貨ウォッチのクォーツムーブの頃と同じですね。もう20年もして、”世の中が腕時計は自動巻が当たり前の時代”が来たとすれば、もっと洗練された自動巻ムーブメントが作られるかもしれないです。”自動巻ブーム”くらいの需要ではまともなムーブメントを作る事は出来ないでしょう。クォーツは当たり前の時代が来たからこそ雑貨ウォッチのムーブメントも洗練されたのかもしれないです。

先日も「ガラスのサイクロップ(ガラスのカレンダー部分の凸レンズ)部分のみが剥がれ落ちましたので新しい物を貼り付け出来ますか?」といった問い合わせがありました。

最近の心境としては、触りたく無いのですがサイクロップの貼り付けのみなら裏蓋を開ける訳でも無しと受付しました。ただ、裏蓋も開けない修理に。

「裏蓋を開けない修理であれ受付後、誤差が大きくなっても、また動かなくなっても保証は出来ません。」こう言うしか無いのです。搬送中のショックでどうなるか分からないくらいですね。もっともフェイクでもシッカリしたムーブメントが入ってるかもしれないですが、その確認が取れない以上は、無茶にも思える了解を頂くしか無いのです。

”無茶にも思える了解”そんな事でトラブルなら受付しない方が安全と思うのが普通の発想です。

全てがそうでは無いですが、説明してきた様にあまりにも程度が悪いムーブメントが出回る様では、全てがそうである扱いをせざるを得ません。ユーザーにその判断は出来ませんからね。

まともな時計屋ならこの記事を読んで。

「ごちゃごちゃ書いても、突っ込まれるだけ損。最初から扱いませんって言っとけば手間も掛からないのに、お前バカか?」と言われるのでしょうが、そこまで解説して断るのがインフォームドコンセント?とは言わないか(v_v)

写真があればもっと分かりやすい説明も出来ますがいかんせん物がものだけに・・・

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