ついこのあいだ

「2005年9月15日」 

先日、顔なじみのお得意様が腕時計のベルト修理に来店されました。60代の女性ですが、この方頻繁に電池交換やベルト交換に来られます。月に3回は来られております。最初は一体この人は何個腕時計を持っているのかと思いましたが、どうやら近所のお年寄りの腕時計を預かって来てくださっている様で、有り難いお方です。月に3回時計店に来店する方も珍しいですが、上得意様。

「お兄さん、この主人のバンド”つい、こないだ”換えたとこよ。何でこんな早く壊れるん?」

(標準語では”つい、先日”とか”ついこの間”ですが関西では”こないだ”になります。)

この箇所のピンが抜けているだけですが、ピンが無い以上は一つコマを外して、そこからピンを抜くしかありません。もちろんサイズが小さくなります。

バックルも一番端ですから、これ以上小さくは出来ません。せめて2個内側なら1コマ外せるのですが。でも・・・・この汚れ方は・・・つい、こないだ?

おばちゃん、しょっちゅう(標準語で頻繁に)色んな人の腕時計持ってくるので、どの腕時計が何時かなんて覚えて無いですね(;^_^A

「あの〜、これは修理は出来ないです。ベルト換えてくださいよ」

「換えてって、あんたそんなん”ピン入れるだけやん”何とかしてよ。しょっちゅう来てるのに、よぉ〜そんな冷たい事言うわ!」こちらとしては、つらい所ですね。

「では、何とかしますが1日お預かりさせて頂きます」

「えっ、1日?。そんなん直ぐにしてよ!」
(この板巻きタイプのピンに既製品はありません。ベルトの数だけ形状・太さ・長さが違おります。それは腕時計のベルト・バンド調整/板バネの調整方法を見て頂ければ分かりますが、よって基本的には板巻きタイプのピンは、コマを外して”ピンを1本余らせる”。これしか方法はありません。)

説明しても、分かって頂けないので仕方が無い。

”時計店のガラ箱”ベルト編

「この中から偶然に同じ形状のピンを探すしか無い訳でして、うまく直ぐに見つかれば1分ですが最悪は何時間も探さなければなりません。」(やっと納得頂き、ホッ!でも本音は”やりたくは無い作業”です。)

先ずはピンの元の形状を確認する為にピンを抜いてみます。しかし・・・この状態がついこないだ・・?

ピンを軽く拭くとこうなりますが。裏返すと。

こうなります。ついこないだねぇ〜。延々と1時間。

見つけました!

若干のベルト形状に違いはありますが、同じメーカーのベルトですし大丈夫でしょう。確認の為にピンを抜いて見ます。

これはピッタシいけました。1時間、掛かりましたが、まだそれで見つかって良かったと胸を撫で下ろします。(なんとガラ箱の5箱目)

そして1日お預かりと言ったのに、夕方ご主人が来られます。

「兄ちゃん、嫁はんが何か無理言うたらしいなぁ、すまんすまん!。
あれなぁ、もう5年使ってるんや

「5年ですかぁ・・・でしょうね」(;^_^A

「でな、あんなん直す価値も無いから新品買うわ!

そっ・そんな・・・あの1時間の作業は何だったんだ!(;_;)

一気読み次は「ROLEX18金無垢/10ポイント」へ。

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